今回解説するのは、福永雅文さんが書かれた【ランチェスター戦略「弱者逆転の法則」】です。
福永雅文さんとは、NPOランチェスター協会常務理事・研修部長、ランチェスター戦略学会常任幹事というゴリっゴリのランチェスター戦略のプロ。
この本良いですよ。小さな会社の戦略バイブルってだけあって、令和だろうと時代問わず使えるくらい大事なことが書かれています。
小さな会社の人には必須な本。儲かる会社の考え方、どのくらいがんばればいいかなど具体的で、泥臭さ満点だけど小さな会社には使えます。また、個人がライバルに勝つための武器としてもいいです。
本書の結論をお伝えします。
「勝てる土俵で圧倒的に勝つ」
小さな会社が近くのチェーン店ではなく、自分の店に来てもらうようにするためには「勝てる土俵で圧倒的に勝つ」が欠かせないという内容
小さな会社がランチェスター戦略が大事なのはわかったからその「勝てる土俵で圧倒的に勝つ」ってどうやんの?
今回はこんな解説内容でお伝えします。
- 勝てる土俵で圧倒的に勝つとは?
- なぜ圧倒的に勝つことが必要なのか?
- 小さな会社6つの差別化手法
- 差別化5原則
こんな流れでランチェスター戦略の必要なエッセンスを解説していきます。
勝てる土俵で圧倒的に勝つとは?

差別化して、3倍の市場シェア差でナンバーワンになるということです。
※ランチェスター戦略では、市場シェア2位以下に3倍差(ルート3倍差)をつける1位のことをナンバーワンと表現します。
ナンバーワンになるために必要な考え方は次の2つです。
ナンバーワンになるための2つ
- 一点集中→競合局面ごとの部分ダントツ1位を目指す
- 足下の敵攻撃→シェア順位が1つ下のライバルの差別化を無効化
事例①:ペット保険でナンバーワン
損害保険は大手3グループが85%を占めています。そこで「ペット保険」でナンバーワンになったのがアニコムです。
簡単に言うと、ペットの医療保険。これは、決済に手間がかかることや、取引が小口という理由で大手がやりたがらない市場でした。その結果アニコムが70%のシェアを取っています。
このように大手がやりたがらない市場のペット保険(差別化)で70%の市場シェア(ナンバーワン)を取ったアニコムは良い例です。
理解を深めるためにもう1つの事例です。
事例②:地域の差別化でナンバーワン
顧客のビフォア・アフターサービスに力を入れていた住宅リフォーム会社アサダ建設は「決めた重点エリア」に販促と営業を集中的にしたことで、効率的かつ効果的に顧客を増やしました。アサダ建設が「地域ナンバーワン」となったこの地では、大手リフォーム会社も歯が立ちません。
この「地域の差別化」は小さな会社のランチェスター戦略で王道です。地域性をもつ小さな会社はアサダ建設を参考にして「地域ナンバーワン」を目指します。
事例のように、小さな会社は差別化(切り方・切り口)でナンバーワンを目指します。
なぜ圧倒的に勝つ必要があるのか?

それは、ナンバーワンは儲かるからです。儲けなければ小さな会社は潰れます。
なぜ3倍なのか?
ライバルにシェアを逆転されない安全圏だからです。
だからナンバーワンを目指します。
そのためにも勝てる土俵作りの「差別化」が必要です。
差別化事例①:でんかのヤマグチ
これだけネットや家電量販店がある中で今も続いている街の電器屋さんは、差別化なしに生き残れるわけありません。
品数や種類、価格で勝負せず、「面倒見の良さ」を究極に高め、「痒いところに手が届くサービス」で差別化。こうして、6店舗も経営する日本一の街の電器屋さんになってます。
具体的には、リモコンの操作のような家電に関することはもちろん、旅行に行く時に鍵を預けることやペットのエサやりまで行ってます。
このように面倒見の良さ(勝てる土俵)で差別化して、街の電器屋さん日本一(ナンバーワン)になった小さな会社が参考にしたい会社です。
差別化事例②:ニッコウトラベル
ニッコウトラベルは「富裕シニア層」に特化し、ニーズの追求・きめ細やかなサービスで株式上場、年商40億円となりました。具体的には、その日の気分や体調で”ゆったり度”を三区分にしているツアー。荷物を自宅⇔自宅まで届ける、在宅介護の斡旋をします。
このビジネスモデルに魅力を感じた三越伊勢丹が2017年に買収しました。
このように富裕シニア層(勝てる土俵)で顧客を絞り、ニーズの追求やサービスでも差別化することで、株式上場(ナンバーワン)でバイアウト。簡単ではないですが、このビジネスモデルは小さな会社の理想だと僕は思います。
よっしゃ!儲かるためには差別化が大事ってわけか!でも差別化ってどうやればいい?コツってないの?
次は6つの差別化手法を具体的に解説します。
小さな会社6つの差別化手法

小さな会社の差別化の切り口は2M+4Pで考えます。
2M
- ①理念・事業の定義(Misson)
- ②市場・顧客層(Market)
4P
- ③商品とサービス(Product)
- ④価格(Price)
- ⑤販路と地域p(Place)
- ⑥販促と営業(Promotion)
上記の6つの切り口で差別化を考えます。
では、それぞれを具体的に解説していきます。
①理念・事業の定義(Misson)
自社の「あり方」の差別化です。これが究極の差別化
例えば、ハーレーはレジャー産業で「モノ」ではなく「コト」を売っています。
これは、ツーリングや休日を楽しむなどといったハーレーのあるライフスタイルを売る企業ということです。
②市場・顧客層(Market)
簡単に言うと「売り先」の差別化です。
例えば、日常品だと地元客で、お土産物だと観光客など
③商品とサービス(Product)
機能、性能、品質の基本価値の差別化。さらに付加価値の用途の差別化。
例えば、ピーターパンの常に焼きたてのパンやセルコの特許製品コイルなど。
④価格(Price)
価格での差別化は「高価格」です。でも、小さな会社は価格以外の差別化で勝負するのが基本です。
例えば、贈答品や特別な時に食べるお菓子やお土産など。
⑤販路と地域(Place)
小商圏の「地域に絞る」差別化です。とはいえ、市場規模の試算はしてください。
例えば、「1世帯の年間購入費×世帯数」この内どのくらい取れば成り立つのかくらいは考える。それに加えてエリア内の競合数も把握します。
⑥販促と営業(Promotion)
これは「売り方」の差別化です。
例えば、カーテン館は服の試着のように「カーテンの試着」という売り方で差別化しました。
次は、実は大事な差別化の心構えです。
差別化5原則

差別化5原則
- 原則①:簡単にミートされない差別化をする
- 原則②:差別化の評価は顧客が決める
- 原則③:差別化の掛け算は相乗効果がある
- 原則④:差別化は自業界の非常識
- 原則⑤:信念のない小手先は通用しない
原則①:簡単にミートされない差別化をする
価格以外での差別化が王道です。いずれ差別化が無効化されるとしても、時間がかかるよう参入障壁を高くします。
原則②:差別化の評価は顧客が決める
差別化の判断は顧客が決めます。コレ忘れずに。
原則③:差別化の掛け算は相乗効果がある
小さな差別化を掛け合わせると強いです。
例:吉野家「早い×安い×美味い」
原則④:差別化は自業界の非常識
自分の業界の常識なことは差別化にならないので、他業界の常識をヒントにすると良いです。
原則⑤:信念のない小手先は通用しない
小手先のテクニックは顧客に通用しません。そのうちバレます。顧客の利益になるように、損をさせないように信念を持って取り組みます。
まとめ
では今回は福永雅文さん著『ランチェスター戦略弱者逆転の法則』という本について解説しました。超ざっくりで振り返りますと、
- 差別化をして、ナンバーワンになる
- ナンバーワンになると儲かるから。
- 2M +4Pの切り口で考える
- 信念を持って差別化する
小さな会社の人は、小難しい戦略本を読むよりもランチェスター戦略を読むでOKです。
感想

強みがイマイチ無いので、どうしたら強みが作れるか参考にしたくて本書を読みました。
結論は、「めっちゃ参考になりました。」
例えば、地域、顧客を絞ることやサービスを顧客用にカスタマイズするなど。これを全部やる。すると相乗効果でめっちゃ強い差別化になるって話はとても参考になった。
僕みたいに特別な強みが無くても大丈夫なんだってテンション上がりました。
ただ残念なのが、新規顧客獲得の話で、既存顧客に対しては全く載っていません。
顧客を獲得してからは、どうしたら良いの?って感じです。
僕みたいに感じた人は、ジェイ・エイブラハムの『ハイパワー・マーケティング』がオススメです。
とはいえ、本書は事例もわかりやすくビジネス初心者向けです。戦国時代好きの人にはメッチャわかるって例えが豊富です。
小さな会社の社長は自分の商売の参考書になります。
オススメな人

オススメな人は以下の人です。
- 小さい会社の社長
- 強みが無いって悩んでる社長
- 頑張ってるのに儲かってない
- 脱サラでサラリーマン脳が抜けない
なぜ小さな会社の社長にオススメなのか?
タイトル通り「弱者逆転」だからです。まさに本書は小さな会社向けです。
どうやって考えてどうやって商売をすると儲かるのかが書いてます。簡単ではないですが、真面目にコツコツやってる小さな会社ほど、向いてます。
忙しいけど儲けが少ないってなってるなら、少し時間を作って読んでほしいです。その価値が本書はあります。
努力と成功を比例させたい人にオススメします。
中田敦彦のYouTube大学でもオススメしていた本です。